シミの症状を改善すると宣伝する飲み薬は数多く販売されています。
でも、多くの製品はビタミンCや、Lシステインを有効成分とした第三類医薬品であるため、効果が非常に緩和的です。
一方、トラネキサム酸は複数の医師によって、特定のシミ(肝斑)に対する効果が実証されている飲み薬です。
当ページでは、はじめに「シミの市販薬、その効果って実際のところどうなの?」という点についてお伝えした上で、肝斑に効果があるとされているトラネキサム酸について、お伝えしています。
市販の飲み薬でなかなか効果が実感しにくいものを使い続けてしまった結果、後になって後悔するということがないように、当ページの内容をよくご理解頂ければと思います。
市販されている飲み薬、その効果の実際
市販の飲み薬が「シミを消す」ほどの効果があるかというと疑問
まず、シミの市販薬についてです。
冒頭にもお伝えした通り、シミに効果があるとして市販されている飲み薬はいくつかありますが、その市販薬の多くはビタミンC(アスコルビン酸)や、Lシステインを有効成分としたものとなっています。
そして、それらの成分がシミ(特にシミ予防)に対して良い影響があるのは確かですが、それらの成分を配合した市販の飲み薬が「シミを消す」ほどの効果があるかというと疑問です。
シミは、そもそも有害な紫外線から体を守るために、必要だから作られているものである上、体の機能として皮膚の中にしっかりと存在するものであるため、本来は簡単に消えては困るものです。
そのため、シミが気になる人はレーザーで焼いたり、トレチノイン(皮膚に激しい反応を起こしてシミを排出する薬)を塗ったりと、シミを消すために本来は「強い治療」が必要です。
そういった事実に対して、もしビタミンCやLシステイン配合の市販品を飲むことで「既にあるシミを消したい」と考えるのであれば、後になって「効果が実感できない」として後悔する可能性が高いでしょう。
シミを消すのであれば市販の飲み薬ではなく、シミ取りレーザー治療をキチンと理解して受けるべき
そこで、もし「本気でシミを消したい」と思ってこのページに辿り着いた方がいるのでしたら、まずシミ治療の王道であるシミ取りレーザー治療について理解することをオススメします。
シミ取りレーザー治療は、「何となくこわい」と不安を感じる方も多いですが、きちんと理解すれば、納得して受けられるものです。
以下のページでは、レーザー治療についてのメリット・デメリット、料金的な面も含めてお伝えしているため、まずはシミ取りレーザー治療をしっかり理解してみてください。
また、実際にシミ取りレーザー治療を受けたリアルな体験談もあるため、こうした情報を参考にしてみてください。
どうしてもシミの飲み薬でシミ治療したいのであれば、肝斑への効果が実証されているトラネキサム酸
これらの情報を踏まえた上で、それでも飲み薬でのシミ治療を検討される方は、トラネキサム酸という飲み薬があります。
このトラネキサム酸は、シミ(肝斑)への効果が複数の医師や論文等の報告によって実証されているため、このページではトラネキサム酸について以下の項から詳しくお伝えしていきます。
トラネキサム酸は肝斑に有効
トラネキサム酸は、女性によく見られる「肝斑(かんぱん)」と呼ばれるシミの症状に対して有効であることが示されている飲み薬です。
また、トラネキサム酸は、第一類医薬品として認可・販売されているものとして「トランシーノⅡ(第一三共ヘルスケア)」という製品もあるため、薬剤師の常駐する薬局またはドラッグストアで購入することもできます。
トラネキサム酸の効果を裏付ける医師の報告
続いて、トラネキサム酸の有効性についてですが、その点については葛西形成外科の葛西 健一郎 医師が、その著書の中で以下のように述べています。
トラネキサム酸(トランサミン他)内服は,肝斑に対して有効である.これは,まぎれもない事実として認定してもよいだろう.
葛西 健一郎 「シミの治療-このシミをどう治す?」 第2版 (2015)
また、他にも乃木田 俊辰 医師(新宿南口皮膚科)も以下のように述べているなど、肝斑に対するトラネキサム酸の有効性は複数の医師によって数多く実証されています。
内服治療の第一選択は,トラネキサム酸であり,様々な作用機序により肝斑に対して有効なことが示唆されている.乃木田 俊辰 「PEPARS」 No.110:18-21,2016
トラネキサム酸からはじめるシミ治療
これらの内容を踏まえて、もし、どうしても「美容クリニックに行かずに、自分でなんとかシミ治療ができないか」と考えている方は、トラネキサム酸の服用からはじめる方法が無難です。
理由としては以下の通りです。
クリニックでも肝斑が疑われる場合は、トラネキサム酸の服用からはじめるケースが良くある
シミの治療に際して何が問題かというと、一にも二にも「肝斑(かんぱん)」です。
この肝斑が顔にある場合、そのままレーザー治療を行ってしまうとその症状が悪化してしまうため、シミの症状が肝斑かどうかの判別は、シミ治療の初期段階で非常に重要なポイントとなります。
そして、診断の結果として、もし肝斑であることが疑われる場合、レーザー治療などによるシミ治療は進められません。
そこで何をするかというと、「トラネキサム酸を飲みながら様子を見ましょう」となる場合があります。
このように、美容クリニックにおいても肝斑が疑われる場合は、結局トラネキサム酸の服用からシミ治療をはじめるケースがよくあります。
そこで、もし美容クリニックに行くのに抵抗があって自分でシミをなんとかできないかと考えている方が、肝斑の面でも気になるのであれば、トラネキサム酸から始めるのがクリニックで実際に行われている方法に適ったやり方であると言えます。
リスクが低い
なお、トラネキサム酸は古くからある薬で、副作用も少ないと言われています。(*1)
また、飲み薬であることから、生活上の支障もほとんどありません。
これが、いきなり塗り薬(ハイドロキノンやトレチノインなど)を使って独自にシミ治療を開始しようとなると、皮膚の炎症に悩まされたりもする上、外部的な刺激や紫外線から肌を保護するための生活上の制約も増えます。
このように考えると、素人目に確かな肝斑の診断もできない状況から、自己流でいきなり副作用やリスクのある塗り薬でシミ治療を開始するのであれば、トラネキサム酸の服用から開始する方が、リスクは低く、楽でもあります。
トラネキサム酸の飲み方
続いてトラネキサム酸の飲み方です。
トラネキサム酸は、シミ治療の第一人者である葛西 健一郎 医師の経験によると、1日500mg の使用でも十分効果があがる上、多く飲めば効果が出るというわけでもないため、葛西 健一郎 医師のクリニック(葛西形成外科)では、実際に全ての例で1日500mg 投与にしているとのことです。(*1)
ちなみに、500mgがどの程度の量かというと、サプリメントのカプセル1個分としてよく見られる量です。
シミをつくる生活習慣を見直す
なお、トラネキサム酸を摂取してみた上で、実際にトラネキサム酸が有効であった場合、シミの症状としては肝斑が疑われます。
ただ、対症療法としてトラネキサム酸で肝斑の症状が改善したとしても、根本の原因が改善されなければトラネキサム酸の服用をやめた場合に、以前と同じようにシミの症状が再発してしまう可能性が高いです。
そこで、大切なことは何かというと、肝斑の根本原因である肌の「こすりすぎ」をやめることです。
この「肌のこすりすぎ」の問題については、このページで詳しくお伝えすると長くなってしまうため、以下のページを参照してみて頂ければと思います。
シミの飲み薬、トラネキサム酸について専門的な内容を知りたい人へ
ここまで、シミに対する市販の飲み薬の効果の実際についてと、トラネキサム酸についてお伝えしてきました。
おそらくここまでの内容で多くの方にとっては十分かと思いますが、もしトラネキサム酸についての専門的な内容についても知りたいという方がいるかもしれませんので、専門的な内容についても一応記載しておきます。
トラネキサム酸についての専門的な内容も知りたいという方は、以降の内容をご覧ください。
なお、以降のページに記載されている内容の多くは、乃木田 俊辰 医師が医学専門誌 「PEPARS」(No.110:18-21,2016)に記載しているものを参考としているため、正確な内容についてはそちらを参照してください。
トラネキサム酸の構造式
トラネキサム酸の作用
トラネキサム酸は抗プラスミン作用と有する薬用アミノ酸で、止血・抗炎症・抗アレルギー効果を示します。
また、トラネキサム酸には以下の作用があることも報告されていることから、これらの作用によって肝斑に対する有効性が発揮されている可能性があると言われています。
- アラキドン酸の遊離
- プロスタグランディンやロイコトリエン産生に対する抑制作用
- 好中球の活性酸素に対する抑制作用
- マスト細胞のヒスタミン遊離に対する抑制作用
ただ、トラネキサム酸が肝斑に対して具体的にどのように有効であるかの理由については、様々な可能性が挙げられてはいますが、明確なところはわかっていません。
しかし、肝斑に対して有効である明確な理由はわかっていなくても、効果があること自体については、論文等の結果から実証的に示されてきた歴史があります。
トラネキサム酸の有効性を示す歴史
トラネキサム酸の有効性を示す歴史については、以下の通りです。(以下、敬称略)
1979年に二條貞子が異なる皮膚疾患の患者にトラネキサム酸を投与したところ、たまたま併発していた肝斑が2~3習慣後に消褪したことが報告された。
その後、1985年に御子柴 甫らや、1988年に東 萬彦が有効性を検討し、トラネキサム酸1日量750~1500mg、4週間~5か月間投与での有効率は85.3%と報告された。
さらに、2007年の川島 眞らによる比較試験の結果、トラネキサム酸を用いることで肝斑に対して有意な改善が認められたと報告された。
トラネキサム酸の副作用
トラネキサム酸の副作用として明示されているものとしては、以下があります。
痙攣(けいれん):人工透析患者において痙攣があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
引用:日本医師会雑誌 第142巻・第5号/平成25(2013)年8月
トラネキサム酸の副作用については、あまり大きな懸念が示されている例はほとんどありませんでしたが、上記の例もあるため一応ご留意頂ければと思います。
参考文献
(*1)葛西 健一郎 「シミの治療-このシミをどう治す?」 第2版
(*2)シミ・肝斑治療マニュアル (PEPARS(ペパーズ))